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位置検出の課題を解決!磁石不要・高耐環境を実現するインダクティブポジションセンサ入門

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2026.07.24

 「位置を正確に測る」技術は、自動車や産業機械、家電製品など、私たちの身の回りにあるさまざまな機器を支えています。自動車のステアリングは、どの角度まで切られているのか。ロボットアームの関節は、狙った位置まで動いているのか。洗濯機の水位は、どこまで上昇したのか。こうした「位置」を正しく認識できなければ、機械を思い通りに動かすことはできません。EV化や工場の自動化が進む現在、位置検出には、より高い精度や耐久性、安定性が求められています。

 そこで注目されているのが、磁石を使わずに位置を検出する「インダクティブポジションセンサ(IPS)」です。過酷な環境にも対応できる、設計現場の課題を解決する新たな選択肢として期待されています。

1. 「どのセンサにも弱点がある」という現実

 位置センサには複数の方式があり、それぞれに得意・不得意があります。精度、耐久性、設置環境、コストなど、何を優先するかによって最適な方式は異なります。

 例えば、ポテンショメータは構造が単純で低コストですが、接触式のため摩耗による寿命の問題があります。光学式エンコーダはディスクに刻まれたスリットを光で読み取ることで、高い分解能を実現できます。一方で、粉塵や油、汚れによって光が遮られ、検出精度が低下する恐れがあります。工場や建設機械などの過酷な環境では無視できない弱点です。レゾルバは高温や振動に強く、高い耐久性を備えていますが、専用回路や比較的大きな構造が必要になるため、小型化やコスト面に課題があります。
 そして、近年広く採用されているのがホールセンサです。小型で振動にも強く、非接触で位置を検出できますが、検出には磁石が必要です。
 この「磁石が必要」という条件が、現在の設計現場では新たな課題になっています。

 このように、どの位置センサも万能ではありません。設計者は用途や設置環境、コスト、耐久性などを考慮しながら、最適な方式を選ぶ必要があります。

2. 「磁石を使わない」という発想

 では、なぜ今になって新しい位置センサが求められているのでしょうか。

 例えば電気自動車では、インバータやモータの周囲に大きな電流が流れ、強い磁場が発生しています。
 この外部から発生する磁場は、いわゆる「外乱磁場」と呼ばれ、磁気式の位置センサに影響を与える可能性があります。
 本来検出したい磁場とは別の磁場が周囲に存在すると、センサが誤った位置情報を出力してしまう可能性があります。
 そのため現在では、自動車業界でも外乱磁場への耐性が重要な評価項目となり、設計者はセンサそのものの精度だけではなく、「周囲の磁場にどれだけ影響されないか」まで考慮する必要があります。さらに、設計現場が直面している課題は磁場だけではありません。

 高温、振動、油、粉塵など、センサが使用される環境はますます厳しくなっています。加えて、磁石に使用される材料の価格変動や調達リスクも、無視できないテーマとなっています。性能だけではなく、安定して調達・供給できることまでが、部品選定の条件になりつつあるのです。
 こうした複数の課題を背景に、「磁石を使わずに位置を検出する」という発想が改めて注目されています。

3. 磁石なしで位置を測る。その仕組みは意外とシンプル

 「磁石を使わずに位置を測る」と聞くと、何か特別な技術を想像するかもしれません。しかし、インダクティブポジションセンサ(IPS)の考え方は意外にもシンプルです。
 センサ基板には、送信用と受信用のコイルパターンが形成されています。送信用コイルに数MHz帯の高周波信号を流すと、その周囲には磁場が発生します。
 その上を一枚の金属ターゲットが移動すると、ターゲットに発生する渦電流によって磁場の状態が変化します。受信用コイルがその変化を電圧信号として捉え、ICが位置情報へ変換します。これがIPSの基本的な仕組みです。

 つまり、IPSは、磁石が作る静的な磁場ではなく、自ら生成した高周波信号に対する金属ターゲットの変化を利用して位置を検出します。
この仕組みが、IPSならではの強みにつながっています。
 IPSでは、数MHz帯の高周波信号を利用して位置を検出します。一方、EVのモータや電源系統から発生する外乱磁場は、一般的にそれより低い周波数帯です。
つまり、IPSが利用する数MHz帯の信号は、モータやインバータ由来の低周波帯ノイズと周波数領域が離れているため、外乱磁場の影響を受けにくくなります。
検出する信号と外部ノイズの周波数帯が異なるため、外乱磁場の影響を受けにくく、安定した位置検出が可能になります。
 もちろん、高周波を使うだけで高精度が実現するわけではありません。

 IPSには、温度変化や部品のばらつき、組み付け誤差などを補正する仕組みも備わっています。センサ内部で補正を行うことで、実際の使用環境でも安定した位置検出を維持できるよう設計されています。
 「磁石を使わないから高性能」なのではなく、磁石を使わない方式だからこそ、現在の設計課題に適応しやすいことが、IPSの本質と言えるでしょう。

4. 現場で評価される4つの理由

 IPSが注目される理由は、単に新しい技術だからではありません。現場の設計者が抱える課題に対し、実用的な解決策を提示できる点にあります。

1. 過酷な環境への強さ

 工場や建設機械、車載用途では、高温や振動、油や粉塵などを避けることはできません。
 光を利用する方式では、汚れが性能に影響する場合があります。一方、IPSは金属ターゲットによる磁場の変化を利用するため、汚れや粉塵が発生する環境でも安定した動作が期待できます。

2. 磁石を必要としない

 IPSは、位置検出のための磁石を必要としません。
 近年は資材調達やサプライチェーンの観点からも、特定材料への依存を減らしたいというニーズが高まっています。磁石を使わないという特徴は、性能だけでなく調達面でもメリットにつながります。

3. 高精度な位置検出が可能

 内部の補正機能によって、温度変化や実装誤差、部品のばらつきによる影響を抑えることができます。
 これにより、長期間にわたって安定した位置検出が期待できます。

4. 外乱磁場の影響を受けにくい

 EV化や機器の高電力化が進む中、外乱磁場への耐性は重要性を増しています。周囲にモータやインバータが存在する環境でも、磁気式センサとは異なる原理で検出できることは、設計上の大きなメリットとなります。

 こうした複数の特長を組み合わせることで、IPSは従来方式では対応が難しかった用途における、新たな選択肢として期待されています。

5. 自動化を支える機能安全への活用

 近年の自動化設備やロボット、EV関連システムでは、安全性や稼働率向上のためにセンサの冗長化要求が高まっています。
 1つのセンサに故障や異常が発生した場合でも、システムを安全に運転継続できるよう、複数の異なる原理のセンサを組み合わせる設計です。

 その選択肢の1つとして注目されているのが、ホールセンサとIPSを組み合わせた冗長化構成です。
 異なる検出原理のセンサを組み合わせることで、双方の検出結果を比較し、異常検知や相互監視を行うことができます。
 また、異なる検出原理を採用することで、同じ原因によって複数のセンサが同時に故障する「共通故障要因」の低減にもつながります。

 高い信頼性が求められる産業機器や自動化設備において、IPSは機能安全を支える選択肢の1つになり得ます。

6. センサ選びは、「何を測るか」から「どこで測るか」へ

 位置センサの選び方は、変わり始めています。
 これまでは、「どれだけ高精度に測れるか」が主な判断基準でした。しかし現在では、精度に加えて、次のような要素を総合的に評価する必要があります。

  • 外乱磁場の影響を受けないか
  • 高温や振動、油、粉塵のある環境でも安定するか
  • 小型化しやすいか
  • 部品の調達リスクはないか
  • 将来の量産にも対応できるか
  • 機能安全や冗長化に活用できるか

 つまり、センサ選定では「何を測るか」だけでなく、「どのような環境で測るか」が、より重要になっているのです。
 その中でIPSは、従来方式を置き換える万能センサではなく、これまで課題が残っていた用途に対して、新たな選択肢を提供する技術です。

7. まとめ | IPSは導入しやすい新たな選択肢へ

 従来は、コイルパターンの設計に電磁界の知識が必要で、試作と評価を繰り返すことが導入のハードルになっていました。しかし現在では、設計支援ツールやシミュレーション環境が進化しています。コイルパターンの自動生成や設計段階での性能検証、基板製造データの作成まで、効率的に進められるようになっています。

 また、評価ボードやGUIを活用することで、試作後の出力値や角度データをリアルタイムで確認できます。適切なツールや技術サポートを活用すれば、開発期間の短縮や設計品質の向上も期待できます。IPSは、磁石を使わず、外乱磁場や過酷な環境に対応できる位置検出方式です。すべての用途に適した万能な技術ではありませんが、従来方式では解決が難しかった課題に対して、有力な選択肢となります。

 弊社では、IPSの選定からコイル設計、評価環境のご提案まで、お客様の開発フェーズに合わせたサポートを行っています。「自社の用途に適用できるか確認したい」「設計の進め方が分からない」といった場合は、お気軽にご相談ください。

(執筆者 / 編集者:本名 大輔)

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    IPSの選定からコイル設計、評価環境の構築まで、開発フェーズに合わせてサポートします。

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