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SoM(System on Module)とは?メリット・デメリットと導入事例を徹底解説

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2026.07.02

 近年、IoT機器の普及や産業機器の高度化に伴い、組み込みシステムの開発において、開発期間の短縮、コスト削減、そして長期供給・高信頼性が強く求められています。従来のディスクリート設計ではこれらの要求に応えることが難しくなり、CPUや主要な周辺回路を一体化したSystem on Module(SoM)が注目を集めています。

 本記事は、SoMの基本的な知識から、市場動向、導入のメリット・デメリット、そして具体的な採用事例まで、幅広く解説します。

1. SoM(System on Module)とは?

Arm System On Module(SoM)のイメージ図 (出典:ADVANTECH AOM-6731)

 SoMは「System on Module(システム・オン・モジュール)」の略称で、「ソム」と読みます。これは、CPU、メモリ、ストレージなど、コンピュータの中核機能を小型の単一モジュールに集約したものです。

 一般にSoMはCPUモジュールと同義で用いられることも多く、どちらも処理機能を一体化したモジュールを指します。モジュール単体では動作せず、電源回路や各種I/Oコネクタを備えたキャリアボード(ベースボード)に接続することで、一つのシステムとして機能します。

SoC/SBC/CoMとの違いと使い分け

 SoMと混同されやすい用語に、SoC(System on Chip)、SBC(Single Board Computer)、CoM(Computer on Module)があります。

  • SoC(System on Chip)
     「システム・オン・チップ」の略で、CPU、GPU、メモリなどの主要な機能を単一の半導体チップに集約したものです。SoMはSoCに加えて、メモリやクロック発振子、パワーレギュレータなどのサポートコンポーネントを備えたボードであり、SoCはSoMの構成要素の一つと考えることができます。
  • SBC(Single Board Computer)
     シングルボードコンピュータは、その名の通り一枚の基板上に主要なコンピュータ機能をすべて搭載したものです。SoMとは異なり、キャリアボードなしで単体で動作することを想定されています。Raspberry Piなどが代表例です。
  • CoM(Computer on Module)
     CoMはSoMとほぼ同義で使われることが多く、CPU、メモリ、ストレージなどのコンピュータの中核機能を単一の小型モジュールに統合したものを指します。

 SoM/CoMは、キャリアボードをカスタマイズすることで、アプリケーションに特化した柔軟な設計が可能になるため、開発期間の短縮とコスト削減に貢献します。SoCはさらに汎用性が高く、より根幹の設計から関わる場合に用いられます。一方、SBCは手軽に導入できる反面、カスタマイズ性が限定的です。

SoMの代表的な規格・フォームファクタ

 SoMには、いくつかの代表的な規格やフォームファクタが存在します。これらは、サイズ、消費電力、I/Oの数などによって特徴が異なります。

 加えて、接続方式や対応するCPUアーキテクチャ、拡張性、耐環境性といった観点でも違いがあり、用途やシステム要件に応じた適切な選定が重要となります。

 特に近年では、高速インタフェースへの対応や小型化へのニーズの高まりにより、新しい規格が登場している一方で、従来規格も互換性や豊富な実績から引き続き広く利用されています。

項目 COM-Express COM-HPC SMARC Qseven OSM SO-DIMM
世代 Now New Now Old New Now
接続 コネクタ 高速コネクタ コネクタ コネクタ LGA(はんだ) コネクタ
ピン標準化 ×
CPU x86中心 x86中心 ARM中心 x86/ARM ARM中心 仕様依存
サイズ 中~大 中~大
交換性 ×
振動耐性

 これらの規格化されたモジュールを利用することで、ベンダ間や世代間で部品の交換が可能になり、製品開発の柔軟性が向上します。

2. SoM導入のメリット・デメリット徹底解説

開発期間・コストの削減と半導体供給リスクの軽減

 SoMを導入する最大のメリットは、開発・調達・生産の各フェーズで得られる効率化です。

  • 開発期間の短縮
     CPUやその周辺回路の設計・検証済みモジュールを使用することで、難易度の高いプロセッサ周りの基板設計が不要になります。これにより、製品化までの時間を大幅に短縮し、開発リソースをアプリケーション開発や差別化要因の創出に集中させることができます。
  • 開発コストの削減
     基板設計にかかる手間とコストが削減され、評価キットを活用することで早期に評価が可能になります。
  • 調達・生産の効率化
     SoMは規格化されており、異なるメーカの同規格モジュールに切り替えやすいため、半導体不足などの供給リスクを軽減できます。また、ボードベンダからモジュール買いすることで、主要部品を一から調達する必要がなく効率化が期待できます。

ソフト/ハード両面での開発効率化

 SoMは、ソフトウェア・ハードウェアの両面で開発効率を高めます。

  • ソフトウェア開発の効率化
     OSやドライバを含むBSP(ボード・サポート・パッケージ)が提供されるため、OSのポーティングやドライバ開発の作業負荷が軽減されます。また、ハードウェア完成前から並行してソフトウェア開発を進めることができ、製品性能アップ時もSoMの互換性によりソフトウェア改修が最小限で済みます。AI開発者にとっては、ハードウェアの専門知識がなくても高効率・高性能なシステムを構築し、AIモデルを容易に交換できる柔軟性が魅力です。
  • ハードウェア開発の効率化
     PCB設計や統合といった複雑な作業を省略でき、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の性能と柔軟性を低コストで享受できます。新しいペリフェラル追加時も最新規格に適応しやすい柔軟性を備えます。

導入時の課題と注意点

 SoMの導入には多くのメリットがありますが、いくつかの注意点やデメリットも存在します。

  • カスタマイズの制約
     基本的な機能がモジュールとして固定されているため、極端なカスタマイズを必要とする場合には不向きな可能性があります。ただし、キャリアボードの設計でカバーできる範囲も広いです。
  • ベンダロックインのリスク
     特定のベンダに依存しすぎると、将来的な供給停止や価格変動のリスクがあります。複数のベンダの同規格モジュールを検討することが重要です。
  • 技術選定の複雑さ
     多数の規格やメーカ、CPUアーキテクチャが存在するため、自社の要件に最適なSoMを選定するための専門知識が求められます。

3. SoMの技術選定ポイント

 SoMを選定する際には、性能や拡張性だけでなく、将来的な保守や供給まで見据えた検討が重要です。本章では、選定時に押さえておくべき主要な6つのポイントについて解説します。

選定ポイント 詳細
互換性 将来的なアップグレードや代替モジュールへの切り替えを考慮し、規格に準拠しているか、ピン互換性があるかなどを確認します。
拡張性 必要となるI/Oポートやペリフェラルをキャリアボードで拡張できるか、十分なインタフェースが提供されているかを確認します。
性能 アプリケーションに必要なCPU性能、メモリ容量、ストレージ容量などを満たしているかを確認します。AI処理など特定の要件がある場合は、GPUやNPUの性能も考慮します。
信頼性・耐久性 動作温度範囲、耐衝撃性、耐振動性など、使用環境に合わせた信頼性・耐久性を持つ製品を選びます。
消費電力 特にバッテリ駆動の機器やファンレス設計が求められる場合、消費電力は重要な選定ポイントです。
長期供給 組み込み機器のライフサイクルは長いため、長期的な供給に対し柔軟な対応であるかを確認します。

4. SoM市場の主要プレイヤと活用分野

 現在のSoM市場には、ADVANTECH、ARBOR Technology、NVIDIA、SECO、VIAといった多様なプレイヤが存在します。各社は、特定の規格に特化したり、特定の産業分野に強みを持ったり、あるいは幅広い製品ラインナップを提供したりと、それぞれ異なる戦略で競合しています。

 各メーカ毎に規格やCPUアーキテクチャに強みを持つため、自社の要件に合致するメーカを選定することが重要です。

SoMの応用されている分野

 SoMは、その高い汎用性と柔軟性から、多岐にわたる産業分野で活用されています。

IoT・産業用機器

  • 工場自動化
     ロボット制御、ライン監視、物流の製品検査、パワープラント管理など。エッジコンピューティングによるリアルタイムデータ処理やマシンビジョンシステムにSoMが活用されています。
  • スマートシティ
     センサネットワークを構築し、交通管理、公共施設監視、エネルギ効率化などに貢献しています。
  • ゲートウェイ
     IoTデバイスからのデータを集約・処理し、クラウドと連携するゲートウェイ向けにも超小型ボックスPCやファンレスPCとして採用されています。

医療機器・計測機器

  • 医療用レコーダ、血液分析器
     高度な画像処理やデータ分析を必要とする医療機器において、SoMが利用されています。
  • メディカルパネルコンピュータ
     医療現場の特殊な環境下での使用に耐える、ファンレス設計や広温度範囲対応のSoMが利用されています。

ロボティクス・マシンビジョン

  • ロボット/ロボットアーム
     複雑な動作制御や画像認識に、高性能なAIを搭載したSoMが活用されています。
  • マシンビジョン
     在庫検査、署名認識、不良検出など、現場でのデータ分析やセンサ機能の再構成が可能なエンベデッドシステムにSoMが採用され、コストを抑えながら最大限の活用が図られています。

セキュリティカメラ・ネットワークインフラ

  • セキュリティカメラ
     ビデオ分析機能を搭載した最先端のセキュリティカメラシステムにSoMが活用されています。機械学習を用いて映像をリアルタイムで分類・理解し、正確なデータストリームを提供します。
  • ネットワークインフラ
     伝送/交換装置用測定器、プロトコルアナライザなど、ネットワーク機器の高速データ処理や信頼性確保にSoMが貢献しています。

今後の成長性

 AI技術の発展により、より精度の高い市場分析が求められる中で、SoMの重要性はさらに高まっています。今後も、IoTのさらなる普及、エッジコンピューティングの進化、AIの組み込み需要の増加などが、SoM市場の成長を牽引する主要なトレンドとなるでしょう。また、半導体不足のリスクヘッジとして、モジュール化されたSoMの採用が増加する傾向も見られます。

5. まとめ

 SoMは組み込み機器開発において、開発期間の短縮、コスト削減、製品の高性能化、長期安定供給、そして耐環境性といった多くのメリットをもたらします。これにより製品の早期市場投入、リソースの最適化、そして結果として市場での競争力向上に貢献します。

 導入の成功には自社の製品要件に合致するSoMの適切な選定、信頼できるベンダや開発パートナとの連携、そして提供されるBSPやサポート体制の活用が不可欠です。

 当社は、SoMの選定に加え、OS、セキュリティ、キャリアボードの設計・開発など、SoMを取り巻くシステム全体をトータルでご提案いたします。

 SoM市場は今後もAIやIoTの進化に伴い拡大していくと予測されます。将来の製品ロードマップを見据え、互換性、拡張性、性能、信頼性といった多角的な視点からSoMの導入を検討することが重要です。

(執筆者:三ツ木 良太 編集者:安西 滉樹)

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